Chocolat ショコラ
「なぜチョコレートが好きなのですか?」とよく聞かれる。
最初の出会いは憧れだった。
小学校の時、天神祭りの頃になるとよくひとりで母の実家に遊びに行った。
僕が行くと、いつも祖母が板チョコをまるまる一枚くれるのだが、
小学生の僕にはその板チョコが贅沢で艶めかしく、大人の輝きを見せた。
次の出会いは初めてパリに行った時、
店中がショコラ色でシックにまとめられた ショコラトリーを目にした時だった。
大理石とアンティークの家具が配された重厚な雰囲気の漂う店内で、
一粒のショコラは美しい箱に収められていた。
「何だこの世界は?」 当時の僕には少々場違いな空気を感じながらも、強烈な印象を持った。
そんな記憶や経験が僕の原動力となって、今までショコラを作ってきた。
5年前にショコラトリーを開いてからは、
ラボで試作を重ね、それをお店に並べる日々が続いた。
その合間を縫って各国のショコラトリーや工場を訪れ、カカオ農園にも出向いた。
歴史やテイスティングについても学んだ。
知れば知るほど奥深く、魅力的なカカオの世界、
これからも憧れの気持ちを失わず、ショコラを作り続けていきたい。
中谷哲哉