11月の中頃に1週間パリに滞在した。
昔はパリ到着後すぐにディナーに出かけ、
翌日の朝から地図を片手にお菓子屋さんやチョコレートショップを巡り、
翌日の朝から地図を片手にお菓子屋さんやチョコレートショップを巡り、
夜は星付きレストランで食事というエネルギッシュな旅をしていた。
最近は午前中は美術館や博物館で心を落ち着かせて、
昼からは気になっていた店を見て廻り、
夜はビストロというのが定番になってきた。
僕はフランス料理が大好きで、自分で時々作る事もあるし、
近所のビストロに家族や友人、お店のスタッフ達ともよく出かける。
最近はフランス料理店の間口も広がり、
美味しい料理を、手頃な価格で提供する店が増えて、
自転車に乗って、ラフな格好で気軽に行ける有難い環境になってきた。
今回は一人旅だったが、パリ在住の友人や知人と何度か食卓を囲んだ。
フランスでレストランに行くと、いつもの食事より楽しい気分になれる。
いつもは漠然と思っていたが、今回はそこを少し分析してみた。
フランスのレストランにあって日本には足りないものは何なのか?
美味しい料理、旨いワイン、洒落た内装、素敵な器・・・
今では日本のレストランの方がフランスより優れている事も少なくない。
では何だろう・・・? 客席を見回して考えてみると、
お客さんの話し声、給仕人の笑顔、自信と優しさに溢れたシェフの姿、
それらが醸し出す雰囲気が店全体を包み込み、客席を揺らしているのだった。
パリのビストロは隣の席が近く、テーブルも大きくないが
そんな事は気にもかけず、みんな数時間ノンストップで話し続ける。
給仕人はお勧め料理を昨日自分が食べたが如く説明し、
テーブルに来るたびに「どう?」「だいじょうぶ?」と親しく聞いてくれる。
シェフは時々客席の様子を窺いながら、厨房を取り仕切る。
心地良さのすべてが、人々の発するエネルギーなのであった。
僕にとって食事をする楽しみは、
美味しい料理とワインを楽しみながら、食卓を囲む家族、友人、仲間達と、
人生の楽しみ、生きる喜びについて語り合う事である。
今回の旅でその事を確信した。
中谷哲哉